今こそ「クルマを捨てて歩く」と言えるか

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思うに、杉田聡『クルマを捨てて歩く!』(講談社+α新書、2001年)は、世に出るのがいささか早すぎたのかもしれません。

この本は、クルマを持たないことの効用を、個人レベルのものとして説いたものです。クルマを持たないことには、地球環境や渋滞問題、排気ガス問題、振動問題、交通事故問題、等々の大きな問題に対して効果があります。本書でももちろんそうした点に触れていますが、視点はあくまでも「普通の市民の一個人としてどうか」にあります。このことが、本書を読みやすくしている最大の理由でしょう。

個人として、というのは、たとえば、自動車を所有しなければお金がこれだけ浮くという現実的な話から、子供が外を歩くうえで自動車がどれだけ危険かといったことや、地域づきあいへの影響、歩く楽しさに至るまで、研究紹介から著者自身の体験や感想まで交えて書かれているのです。丁寧な文体と楽しそうな雰囲気もあいまって、読んで共感する人が多いのではないでしょうか。

本書の著者は、北海道は帯広市在住だそうです。「地方ではクルマは必須だから...」という話は、本書を前にすると成り立ちません。

ただ、何キロでも歩くという筋金入りの著者はあまりにも筋金入りすぎるところがあり、たとえ自転車が自動車のような悪影響なしに速く移動できるとしても、自転車より歩いた方がいい、というラディカルさにはなかなかついていけないかもしれません。適宜、自分のライフスタイルにあわせた読み替えをした方がいいでしょう。

この本が出版されてから8年経ち、本自体は今や新刊として入手することは困難になったようですが、社会的状況はあまり変わっていないように見えます。CO2を減らしましょう、とは言われますが、家庭部門のCO2排出の最も多くを占める自動車を減らそうという声はなかなか聞こえてきません。「無駄なアイドリングをやめましょう」という呼びかけはあっても、「無駄な自動車の使用を控えましょう」と聞くことはまずありません。

もし今この本が改めて発売されたら、どういう反響があるだろうか、以前よりも話題になるだろうか、と、少々興味があります。

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