故宮博物院と呂布

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台北の故宮博物院で買ってきたお土産のマウスパッドを何気なく見ていたら、筆で書いたようなロゴの中の「宮」の字が、口ふたつをつなぐ「ノ」みたいな線のない形に作られていることに気付きました。Webサイトのロゴを見てもやはりそういう形になっています。

江守賢治『解説 字体辞典』にあたってみたところ、この字は伝統的な楷書体では、このように口ふたつをつながずに書くようです。大熊肇『文字の骨組み』にも取り上げられています。楷書の伝統につらなる書体ではつながない形になります。一方で、「説文解字」とそれに影響を受けた康煕字典、それを模範とした明朝体活字では、口ふたつをつなぐ形に作られます。

だから、これは別の字だとかいうのでなく、書体による違いであることがわかります。故宮博物院のWebサイトでも、ゴシック体のような書体(台湾では何というのだろう?)で作った画像では、故宮の宮の字は日本の明朝体活字と同様の、おなじみの字体になっています。ロゴを見て、口をつながないのが「正式な表記」だなどと勘違いしないようくれぐれもご注意を。(このブログをご覧の方には釈迦に説法のような気がしますが...)

というようなことを調べていてふと思い出したのが、中学生の頃に読んだ「三国志」。登場人物の台詞の中に、武将の呂布に関して、「口を二つ並べると『呂』になる」といった言葉があったのですが、それを読んで「間の『ノ』のような線がないと『呂』にはならないんじゃないか」と素朴な疑問を抱いたことがありました。これは、そういう書体が念頭に置かれた上での台詞だったのかもしれないと、今頃になって思ったことです。

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