「世界を魅了するチベット」は日本人を魅了するか

| コメント(0) | トラックバック(0)

石濱裕美子『世界を魅了するチベット』(三和書籍)を読みました。

チベットの仏教文化が西洋世界にどのように受け止められてきたかを、小説や映画などを手がかりに明らかにしていく本です。

チベットのような東洋のことは、同じ東洋人の日本人などの方が分かっているはずという予断を抱きがちかもしれませんが、必ずしもそうではないということがこの本から分かります。

例として最初に取り上げられているのは、20世紀最初の年に書かれたキプリングの『少年キム』です。当時の植民地獲得の時代背景と西洋人の思想的状況を説明し、キプリングが物語の中でチベット仏教僧に特別な役割を与えた背景を説いていきます。また、作者のチベット理解の程度も検証しています。

イギリスでは20世紀初頭には既にチベットに対して作者と読者の間に共有されるイメージが存在しており、チベット仏教もそれなりに理解されていたことが分かります。そこにはそれなりの必然的な背景があったということです。

『少年キム』のほかにも、シャーロック・ホームズの小説や、理想郷シャングリラを描いた『失われた地平線』といった20世紀前半の小説から、当時の時代背景とあわせて、西洋におけるチベットのイメージをあぶりだしています。

後半では、リチャード・ギアやロバート・サーマンといった著名人とチベットのかかわりや、映画の中のチベット、スティングやビョークといった歌手を取り上げています。

さて、我が国では、政権与党の政治家が日本の人口の少ない地方を指して「日本のチベット」と言って物議を醸したのが記憶に新しいところです。このようなお寒い認識しか持たない政治家がチベットを理解しているとは到底言えません。そのような国会議員を持っていることについて我々国民はもう少し真剣に考えた方が良いのではと思いました。当の議員はぜひこの本を読んで、認識を改めていただきたい。そうでないと西洋の知識人の前で恥をかくことになるでしょう。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://yanok.net/yanok/mt-tb.cgi/109

コメントする

最近のブログ記事

ゲッティと英語と日本語
私は1年ちょっと前くらいから、自分で撮っ…
ウソに戸惑う
JIS X 0213の追補1:2004で…
第3第4水準辞書を使おう!
いまだに、広く使われている日本語入力環境…
文字コードを知るための本棚
当サイトのメモのセクションに「文字コード…
今年もやります
震災被災地支援プログラム2012を実施し…